最近は「新しいタイプのレンズ」として、「常用中近タイプ」の累進レンズ(ホヤのJAZ/FDクリアーク、セイコーのインドアLD、ニコンのプレシオ・ホーム&オフィス等)などが出てきています。


 
     


さて、このタイプのレンズは従来のものと何が違うのでしょうか?
それを理解するためには累進レンズに対する前提を理解する必要があります。

累進レンズ
※以下の説明は老眼(老視)がそこそこ進んだ55歳以降で想定しています。

40代以降の方が主に使われる、境目のない遠近・中近・近々レンズの場合、「どの距離でモノを見る必要がある」のか?が大きなキーポイントになってきます。


距離の呼び方、というのは実際に明確な定義というものは存在しないのですが、便宜上、

視点別、呼び方の定義
定義 距離
遠く 2m以上
やや遠く 1~2m
中間 50cm~1m
近く 50cm以下

とします。

実際のシチュエーションに置き換えると

シチュエーション 良く使う距離 良く使う視点
お家の中

家事、テレビなどを含め、ほとんどが2m~50cm以下の範囲内で済むケースが多い

やや遠方
中間
近方

ショッピング 家の中よりも広いスペースになりますので、遠方の視野は不可欠。
値札や効能書きを見ることも多いので、50cm以下でもクリアな視野が欲しい。
遠方
近方
パソコン

デスクトップPC、ノートPCで多少条件が異なりますがほとんどが1m以下の距離に視点を集約されます。

中間
近方
ドライブ

運転の場合はまず遠くのクリアな視野が不可欠です。
さらにメーターやナビゲーションなどの計器類を見る必要がありますので、1m前後の視野も必要になってきます。

遠方
やや遠方
中間


遠近累進のイメージ
中近累進のイメージ
近々累進のイメージ
近用単焦点のイメージ



累進レンズのタイプ

40代以降の方が主に使われる、境目のない遠近・中近・近々レンズは一枚のレンズの中で段階的に度数が変化しているレンズを用います。


それでは遠近、中近、近々などの分類、メリット・デメリットはどのようなものが考えられるのでしょうか。

また、累進レンズ以外の「単焦点」レンズと比べてはどうなのでしょうか?

単焦点の場合は、遠方がハッキリ見える「遠用単焦点」、手元を見るときにだけ使う「近用単焦点」の2つにわけて考察します。

このポイントを理解すると「常用中近タイプ」がどのようなレンズで、どの点において優れているのか分かりやすくなります。

種別 使い方 メリット デメリット
遠近累進 常用(常に眼鏡を掛ける) 累進レンズの中で、もっとも遠方視野が広く、見え方もクリアです。
運転などの屋外利用や、テレビ・映画の鑑賞などに適しています。
中間部分はかなり狭く、近方はやや狭い。遠用単焦点に比べると
遠方のクリアさは多少落ちる。
中近累進 常用、必要時装用の両方 中間の見え方は最も広い。近方も遠近に比べるとかなり広い 遠方はボヤける。中間部分の横方向の視野は狭い
近々累進 必要時装用のみ

ほとんどが近方の見え方に特化しているので、近方の見え方は最も良い。

特にパソコンの画面が50cm、手元の書類は35cmなど、近方で視距離の違う2つの対象を連続的に見る必要がある場合にはかなり効果的である。

遠方、中間はボヤける。
度数の奥行きが少ないので常用にはあまり適さない。
遠用単焦点 常用、必要時装用の両方 老眼以前の方の眼鏡のほとんどはこのカテゴリになります。
遠方のクリアさ、視野ともにナンバーワン。
やや遠方の視野は少し、中間~近方はかなりボヤける。
近用単焦点 必要時装用のみ 近方のクリアさ、視野ともにナンバーワン。 遠方、中間は最もボヤける。
度数の奥行きが非常に少ないのですこし距離が変わっただけでもボヤける場合もある。


種別ごとの使いやすさ分類
それでは上記をまとめたもの、それに加え新しく登場した「常用中近」を5段階評価してみます。

評価対象は、それぞれの視点における「視野の広さ」、「視界の鮮明さ」としています。

もっとも評価が高いものを「5」として、大きい数字ほど評価が高いものとしています。


視野/視界 遠近累進 常用中近 中近累進 近々累進 遠用
単焦点
近用
単焦点
遠方 視野 4 3 2 1 5 1
視界 4 3 1 1 5 1
やや遠方 視野 3 4 3 1 2 1
視界 3 4 3 1 3 1
中間 視野 2 4 5 2 1 2
視界 2 4 5 2 1 2
近方 視野 3 4 4 5 1 5
視界 3 4 4 5 1 5





先ほどのスコアを見ると分かりやすいですが、「常用中近」タイプはとてもバランスが優れています。
ちょうど「遠近累進」、「中近累進」のいいトコ取りをしたようなレンズなのです。
(例)ホヤ JAZを使った場合のイメージ


つまり、家の中、オフィスワークなどに2m~50cmまでの視野が必要なシチュエーションにおいて、やや遠方から近方まで

「眼鏡を掛け変えることなく」、「1本の眼鏡」で過ごせること

が最大のメリットだと思います。

もし、運転をされないのであれば、多少遠方の見え方は落ちるかもしれませんが、外出時にもそのままでも使えるかな、と思います。

※ただし、長時間のパソコンなど中間~近方を重視する場合はやはり従来の中近、近々レンズに分がある場合も多いです。

※運転など遠くの広い視野、クリアな視界が必要な場合は、従来の遠近両用が適していると思います。




実際には、使われる方の度数や、今までの眼鏡経験、生活習慣、仕事内容なども考慮したうえでのご提案になります。

また、実際の見え方をテストレンズを使ってご体験頂くこともできます。

ぜひ、50代以上の方は一度お試しを頂ければ、と思います。