一般的な聞こえのレベルと言葉の音声分布 様々な要因がありますが、加齢と共に聞こえのレベルは低下する事が多く見られます。
左図は小さめの話し声(50db程度)における言葉の音声分布と、年代別の平均的な聞こえのレベルを示しています。
赤い線より下の部分の音声は聞き取れるという事になるのですが、60代以上になってくると高音部を中心に聞き取りレベルの低下が目立ってきます。
このため、言葉に含まれる高音域に属する音、力のない音の聞き取りの正確さが低下し、聞き返しが多くなる傾向があります。




70代の聞こえ方を例にとった場合
例えば70代の平均的な分布を例にとって見ます。
この状態ですと、言葉に含まれる音の要素のうち3割近くが「小さくて聞こえない音」となっています。
この聞こえない音を「聴力損失」と呼びます。
また、騒音クラスの音の大きさに対して、「不快(うるさい)」と感じる音の大きさを「不快レベル」と呼び、「不快でなく聞こえる音の範囲」を「ダイナミックレンジ」と呼びます。

「補聴器」は使用される方の「ダイナミックレンジ」の範疇において、「聴力損失の補填」を目的に音の増幅、調整を行います。

※当然ながら増幅の度合いは「不快レベル」を超えない事が最前提です。




老人性難聴のダイナミックレンジ
次のケースは老人性難聴に多く見られる聞こえの状態です。

低音域から高音域に掛けて暫傾的に低下が見られるのが特徴です。
この場合、先ほどの平均的な70代のケースよりもダイナミックレンジが少なく、聴力損失は7〜8割程度と、小さめの話し声ではかなり聞き取りが困難な状況です。




補聴器装用後の聞こえ
次に示すのが、補聴器装用後の聞こえの状態です。
聴力損失が3〜4割まで聞こえの状態は改善しています。
装用後の聞こえにおける増幅量、グラフのオレンジの部分を「利得」といいます。
利得の量は周波数で異なり、低音域は小さく、高音域は大きくカバーするように設定されています。





大きい音声での聞こえ
先ほどまではやや小さめの話し声を基準にお話しましたが、大きい声はどうなるのでしょうか?
大きい音の場合、小さい音に比べ元々聴力損失の割合が少ないので、増幅の必要量は少なくなります。
この時の利得は小さいもので、十分聞き取りが可能になります。

このような、周波数や音の大きさに応じて利得差を設け、「聴力損失に見合った利得」を与え、聞き取りの明瞭性を高める方式を「ノンリニア方式」と呼びます。



※別に説明をしますが、「リニア方式」は周波数や音の大きさに関係なく、全ての周波数の音を同じように増幅する方式です。
 どちらも良い点がありますので、一人一人に合った選択をする必要があります。

※通信販売に使われている補聴器(集音器)は総じてリニア方式のものが多いようですが、それ以前に本当に一人一人に合った調整をすること自体ができない場合が多く、使えるケースはかなり限定されます。
実際の聞こえを試聴ができないものに関しては、ご購入を控えられた方が賢明のように思います。